2011年5月17日火曜日

原発について二人のタクシー運転手との会話 ~ Conversation with 2 taxi drivers in France & Italy ~

5月のある朝、私はイタリア行きの電車に乗り継ぐ為、ニースの中央駅に向かっていた。
大きな荷物があるので、タクシーを呼んだ。(と、友人に奨められた・・・)

50代半ばくらいのタクシー運転手だった。
まるでイタリア系と思われるような、陽気な運転手。(この辺りは150年ほど前までイタリアで、途中で移り住んだイタリア人も多く、地元の人はかなりイタリア系の家族の人が多い。今もうあまりその面影が、彼らのメンタリティの中に残っていないのは残念だが・・)

それはさておき、彼とタクシーの中で交わした会話の内容。
まず大きな荷物とアジア系の顔立ちの私を見て。
”どこに行くの?”
に始まり、”日本”と答える。
対外そう答える前に、すでに私が日本人と分かって質問してくる気配の人が多いように最近感じる。

”フランス語うまいね。”
”まだまだですよ。”と私。”仕事で英語とイタリア語は使うけど、フランス語はまだ勉強中。やっぱりどの言語よりも発音がむずかしい。”
”ちゃんとしゃべれてるよ。”
”ありがとう。”と礼を言ってみた。

”どう日本は?”いつもよく聞かれる問い。
”ぜんぜん良くないですよ。”
”日本にはもう(震災の後)帰ったの?”
”いえ、これが初めてです。”と、私。
”こっちに住んでるんです。大概は。”
というと、他愛のない話が少し弾んだ。

するとおじさんが、
”僕は、カンボジアやベトナム(元フランス領)には行ったことあるけど、日本はまだで、一度行ってみたいと思ってるんだ”と。
”でも今日本は凄く危ないですよ。もっと治まってから行った方がいい・・”というと、
”・・ああそうだったね・・・”という答えが。
何故か最近、この震災や事故が起きてから、誰もが”日本には一度行ってみたいと思っていた”と私に話しかける人が多い。

”震災だけなら数年で復興できたけど、原発のおかげでどうなるか分からない”というと。
”そうだ、それが一番ネックなんだよ・・”といいかけたおじさんだったが、急に態度が急変☆

”しかし、原発は”唯一つ”のこの世界のスバらしいエネルギー源だ。それをやめることは不可能だし、だからって他にどういう方法があるのだ!”と、まるでサルコジ並みの演説をし始めた!

前に中心街の近所のともだちのコピー屋のタクシー運転手と同年代の店主にも、まったく同じ演説口調で、”唯一つの!”を強調した言い回しに驚いた私は、まるでプロパガンダによって覚えこまされた”スローガン”を唱えている人のように思えたので、彼に行ったのと同じく、
”それは間違っている。あなた方は洗脳されているのよ。”と言った。
するとタクシー運転手は、
”え、何かい?それでは自然再生エネルギーが正しいとでも?そんなの糞で、新しい利権組を生むだけだ!!”と言い放った。
なので私は”風力や太陽光は人体には永久は与えない。日本人も今まで原子力エネルギーをフランスのように過信して来た。その末路がこれ。フランスでは知らないが、日本ではその再生可能自然エネルギーを普及させないように、間で電力会社が高額のマージンを独占的に取る方法など、国の法律まで定めて広がらないようにしている。問題は政治のエネルギー政策と電力会社が密着した構造上の問題なんだ。”
というと、彼は暫く黙ってしまった・・・

その後着くまでは、ほとんど全く違った話題に。
”天気がいいね、最近。まるで真夏みたいだ。冬と夏の境目がない・・(4中まで雨の日が多く寒かった)”とか。
最後駅に着くと、”無事に帰ってね。”と温かい言葉を掛けてくれた。


そしてもう一人の出会ったtaxista(タクシー運転手)は、イタリア・ミラノで。
私はその翌日、日本への乗り継ぎ便に乗るために、リナーテ空港行きのタクシーを予約した。
いつもより大きなメーターのないタクシーがやって来た。

普段であれば20分くらいの道のり。

そのタクシー運転手も、イタリア人らしくとても話し好きであった。

日本で大地震や津波のあった日に、泊っていた同じホテルの受付の人が、心配して荷物を道の向こう側まで運んでくれた。
”日本にはもう(震災後)帰ったの?”
”いやこれが初めて・・”
”じゃ、気を付けて!”
”2週間経ったらまた帰って来るよ。”
少し無言だった。みんなやっぱり放射能が怖いんだよ。日本から来た観光客なんかも本当は色々付着してるんじゃないかって、恐れられてる気がする。(無頓着な人を見ると、私も実際そう思ってしまう。)

また同じく、(フランス人タクシー運転手と同じくらいの)50歳半ばくらいの年のタクシー運転手との会話が始まる。(今回はイタリア語で。)
”イタリア語うまいね。何の仕事してるの?”
”コーディネーターとか、通訳・翻訳とか。イタリアにもフランスの前、結構長く住んでた。”
”どこに住んでたの?”
”フィレンツエ”
”いいとこだねー!美しい町だ”
どんな人に行っても大概、フィレンツエと言うと褒められるので、それは嬉しい。

そしてやはり日本の話になった。
”日本は今どう?あんなにヒドイ状況なのに、物凄く静かに見えるけど・・”話し始めた所で、
”ぜんぜん良くはないよ。政府はその危険性について、ちゃんと国民に伝えようとしていないから、どんなに危ないか分かっていない人が多いためだと思う・・”
”やっぱりそれは政治が問題なんだよ。でも日本は3日間で高速道が壊れたのを直したって聞いた。イタリアではありえない。10年経っても同じ工事をしてるくらいだ。だから日本は大丈夫だよ。”
”いや、でも放射能は逃げられないよ。地震や津波だけだったらまだ酷くても何とかなったかもしれないけど。”
”そりゃそうだね。原発がなければなんとかなったのにとは思う。我々イタリアではどんだけ今福島が危ない状態なのか知っているのに、その放射能や事故の危険性について肝心の日本国民が知らされていないとはね・・残念なことだ。”

この二人の50歳半ばくらいの同年代位のタクシー運転手との会話を見ても、この二つの国の原発政策の違いについても大きな違いがあることが分かる。
サルコジが日本に来日してからほとんど全く、と言っていいほど福島原発の事故のニュースが流れず、原発推進を表明したフランスと、新規の原発は長年作っておらず、自然再生エネルギー転換を先日発表したイタリア。情報公開については、この国の姿勢によって、かなりの部分がその国民に対して違ってきていると思われる。

こんなに実際は隣り合わせのヨーロッパの中でもこれほど、原発に対する意識が明らかに違うということは、その国の原発プロパガンダの力の入れ方によるのだろう。

きっとドイツに行くと全く違うのだろう、と思ってみる。

イギリスはあまり関心のないように思えた・・・(人によるだろうけど。)

1 件のコメント:

  1. 湾岸戦争辺りから鮮明に思いましたが程度や形の差はあれ情報統制は結局どこでも行われてるんでしょうね。かといって日本でしていいというわけではないですが。

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